リサイタルのプログラムノート
リサイタルが迫ってきました(11/26)。
お越し下さる御予定の方、あるいは、どんな演奏会なのかなーと、興味を持って下さっている方に御覧頂きたいなと、一足早く、プログラムノートを抜粋公開。
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中田聖子チェンバロ・リサイタル 2005(大阪文化祭参加公演)
「ヘンデルとバッハの組曲」 2005.11.26 at 日本福音ルーテル大阪教会
〜 Program Note 〜
1685年 ドイツという土地に、音楽史上に名を残すこととなる2人の人物が生を受けた。
彼らの名は、ジョージ・フリデリック・ヘンデル、もう1人の名をヨハン・セバスティアン・バッハといった。
-------- 中略 ---------
さて、今回は、G.F.ヘンデルとJ.S.バッハの「組曲」を焦点に、プログラムを組みました。同歳のこの2人、人間個々あれど対称的な人生側面が見られます。ヘンデルは、理髪師兼外科医の息子としてハレの地で生まれ、ハンブルクでの若き音楽家時代の後、イタリアを経てイギリスに渡り活躍した、いわば国際的な作曲家でした。声楽・器楽いずれの分野でも、当時から今日に至るまで、バロック期の時代の作曲家の1人として評価され、劇場音楽の大家としての一面をもちます。一方、バッハは、アイザナハの音楽家一族の一人として生まれ、その後、アルンシュタット、ミュールハウゼン、ワイマール、ケーテン、ライプツィヒと土地を移って行きましたが、生涯ドイツの土地を出ることなく過ごした作曲家でした。器楽・声楽、様々な形の作品を残すも、不思議なことにオペラは一曲も残していません。
ざっと、このような違いをもつ2人ですが、双方ともチェンバロの為の作品として多くの「組曲」を書きました。バッハは、非常に緻密で、見るからに器楽作品としての完成度の高い組曲が多く、それらは今日、多くの鍵盤楽器の奏者のレパートリーとして演奏されています。一方、ヘンデルの方は、楽譜ずらが非常にシンプルではありますが、劇場音楽の作曲家としての側面が現れ出ている作品が非常に多く、チェンバロにおける演奏表現の多様性・楽器の機能に求められる表現の可能性の高さ…これらをバッハの作品とは、また違った意味で、私に教えてくれました。今日は、このような2人の組曲で、私なりに、作曲家像に迫ってみたいと思います。どうぞ最後迄、お楽しみ頂くことが出来ましたならば、幸いです。
■ G.F.ヘンデル George Friederich Händel (1685ハレ – 1759ロンドン)
彼の存命中に3つの鍵盤楽器曲集が出版された。本日は最初に出版された1720年刊の「クラヴサン(チェンバロ)組曲Suites de pieces pour le clavecin」より、3つの組曲を演奏致します。
・組曲 ニ短調 HWV 428 Suite III, d-moll (1720, London) HWV 428
即興的な走句のプレリュードで始まる組曲。奏者は、次に続くフーガ書法のアレグロとセットでトッカータ風の大きな前奏曲として捉えて本日演奏するが、元々このアレグロは独立した作品。出版時に改訂作曲され組み込まれたようである。次に置かれているのは、アルマンドとクーラントの2つの舞曲。後続はエールで、劇場音楽家ヘンデルの歌い回しの特徴が見え隠れする。又、このエールは、5つのドゥブル(変奏)を持つ。この組曲を締めくくるプレストは、彼のオペラ「忠実なる羊飼い Il pastro fido」の序曲の素材より改訂作曲されたものである。
・組曲 ヘ長調 HWV427 Suite II, F-dur (1720, London) HWV 427
非常にコンパクトな組曲で、4つの楽章のみの器楽ソナタのような構成。アリア風のアダージョで始まり、次のアレグロは常動的だが、旋律楽器の「言葉」を要求するようなアレグロが置かれる。続くアダージョは挿入楽章風。このアダージョは、彼の作品でないとする説もある。最後のアレグロは、ヘンデルらしいテーマをもつフーガ書法。
・組曲 ト短調 HWV432 Suite VII, g-moll (1720,London) HWV 432
全体を通して、劇場音楽家らしい作風の組曲。フランス風序曲(Ouverture)で始まる。この序曲は、彼のカンタータ「忠実な心」の序曲の異稿を出版時に改訂作曲したものと見られる。又、この序曲は後に「オレステス」にも用いられている。後続の楽章は、優雅な風情のアンダンテ(形式は異なるがアルマンドを思わせる)、クーラント風のアレグロ、そしてサラバンド、ジーグ、パッサカイユと舞曲で構成されている。
■ J.S.バッハ Johann Sebastian Bach (1685 アイゼナハ – 1750 ライプツィヒ)
・ フランス組曲 第5番 ト長調 BWV 816 Französischen Suite V, G-dur BWV816
バッハの組曲で最も有名なものと言える「フランス組曲」。この組曲の呼称起源は定かではないが、フランス風の語法趣向で書かれ、クラヴサン固有の撥弦楽器の味わい深さと音色を重視した組曲が納められている。本日演奏する第5番は、バッハの組曲基本形式「アルマンド – クーラント – サラバンド- ジーグ」のサラバンドとジーグの間にガヴォット、ブーレ、ルールの流行舞曲を挿入した構成になっている。
・ パルティータ 第4番 ニ長調 BWV 828 Partita IV, D-dur BWV 828
1731年に「クラヴィーア練習曲集 第1部」として出版された6つの組曲が「パルティータ」。バッハにとって初の出版作品。先に演奏する「フランス組曲」、「イギリス組曲」など、彼は多くの組曲を残しているが、パルティータが最も舞曲形式にとらわれない自由さを持つ。当時次第に、舞曲が実際に踊られるものから、純粋器楽曲としての鑑賞曲へと移り変わって行った時代背景を反映していると言えよう。第4番は、フランス風序曲で始まり、彼のニ長調の調性色、祝典性に満ちた華々しい作風となっている。構成は、組曲基本形式に、アリア、メヌエットが挿入される構成である。
(プログラムノート・曲目解説 中田 聖子)

